19991103毎日マスコミセミナー99講演内容メモ

毎日マスコミセミナー‘99秋/主催:毎日新聞カルチャーシティ/渋谷パルコパートII

「マスコミ面接突破の戦略」

田中 洋(法政大学経営学部教授)  e-mail: hiroshi_tanaka@hotmail.com

 

1.     自己紹介と今日のお話の目的

*私の背景: 電通で21年間、採用委員なども行ってきた。学生の戦略の無さに驚いた。

目的: 面接試験を突破するためにどういう戦略をもてばいいのか。「コツ」を教えるわけではない!コツは通用しない。「どういうことを言ったらいいか」ではない。「どういう言い方で言うか」が問題なのだ。How to say, instead of What to say.20歳程度では同じ平凡なことしか言えない。ちょっとした違いが成功と失敗をもたらす。ちょっとした違いをもたらすにはどうしたらよいのか。

戦略を もつとは、まず第1に目標を設定すること。そしてその目標を効率的に達成するために自分の資源の何をどう活かすか。プロセスを管理せよ。そのためには、相手が何を考えているのか、をわからないといけない。特に相手の弱点は何かを知る。

 

2.面接とは何か

採用側にとって面接とはどのような意味があるのか?/なぜ面接をするのか

A.面接はされるほうにとってもつらいことだが、面接するほうにとってもリスクのある方法だ。電通も何度も失敗している。面接が一発勝負であり、短時間で、しかもその人の将来性を見とおさなくてはいけない。独創性や能力、その他を見ているとどうしても誤解する。誤解しやすい人はまず変わり者の人。独創性があると勘違いされやすい。独創性はいつも無意味と紙一重。しかしこれを狙うのは難しい。

B.面接はリスクを減らすためにある。その人に対して投資をしなくてはならない。仮にひとり500万円かかるとして、4年で回収、2000万円かけることの100人では20億円の決断をしなくてはいけない。だから面接に際しては、まず、投資をするのに間違いないか、という判断が働く。マイナスをチェックする。出身大学(偏差値が産み出す社会的信頼能力については山岸を参照)・成績・実績・学力・常識・潜在能力・モチベーション…。

面接だけで得られる採用側の応募者情報とは何か?/面接でないとわからないこと

C.そして面接は総合的でかつ最終的な判断の基準になっている。なぜならば、面接でなくてはわからない情報が沢山あるからだ。@他人とうまく付き合うことができるか=廻りを巻き込んで仕事ができるかどうか。Aペーパーテストではわからない能力をチェックできる。コミュニケーション・思考力・態度。Bウソがないかどうか。

面接では、問題がないかどうか、それだけではなくて、将来の貢献度がどのくらいあるか、を判定する。しかしそれらは直接判断できないので、何かの「手掛かり」(サイン)を用いる。ある場合はそれが専攻内容だったりする。

3.面接というコミュニケーションの特徴と法則

何を基準に面接しているのか?

「こういう人を採れ」という指示があるわけではない。(採るほうにもあまり戦略がない)唯一あるとすると、「いっしょに働きたい人」という基準である。いっしょに働きたくない人は採用しない。基本的な態度として、いっしょにこの人と働きたい、という気持ちがあると有利。もうひとつ、人間は自分にないものを求める。それが広告会社の場合は重要で、広告論専攻は(よほど学力があれば別だが)逆にバカにされる。

1.Critical-One-Minuteの法則

最初の一分で印象が決まる。それについては大体一致する。理解した気になる。だからこの一分で間違いをしない。そしてこの一分で何かインプレスすることが大事。自分をどのような人間として印象付けたいのか。Impression Managementができないといけない。

2.     Evidenceの法則

常に具体的に語れ。例・エピソード・喩。あなたの主張には常に何かの裏付けや証拠があるか。ジェネリックな話は駄目。誰でもできるような話。外資系のセミナーの体験では、必ず、いつまでにこのセミナーの成果をどう使うか、を誓わせられる。またアメリカの大学の推薦状では常に、エピソードを書くように求められる。日本ではこういう習慣がないので、アメリカでは日本人の推薦状は通用しない。「なぜ広告会社で働きたいのですか?」「広告が好きだからです」では全く駄目。具体的にどう好きかを言わないと、また証明しないと駄目である。

3.     Differenceの法則

あなたの言うことは、「優れた違い」があるのか。言ってはいけない3つのこと。サークル、バイト、旅行。誰でも同じような感想しか言えない。

Differenceを産み出すためにすべき3つのこと

@人生体験の棚卸し〜自分のこれまでの経験を掘り下げる。そのとき何を感じてどうしたか。

A試験官が見ているのは、その人がどの程度「深く考えているか」言うことに理屈がついているかどうか。世の中を動かしているのは理屈。織田信長時代の宣教師対禅宗のお坊さん。理論のない禅宗は転向した。一番使えるのは具体的達成、客観的な評価がついた達成。例;全日本バレーコンテストで2位入賞。ひとつに秀でた人は会社にも貢献できるだろうという発想がある。

Bひとつのことを言うにはその倍の時間はなせるだけの蓄積を持て。少なくともその会社の志望動機について一時間話せるようにしなさい。

 

4.     結論

ダメな戦略とは?

@平凡にしか自分を示せない人。A何も考えていない人。B奇をてらった戦略。自分といっしょに働きたい人とは、面接でもっと話したい人のこと。

凡庸な人間の場合どうするか

自分がどういう人になりたいか、そのビジョンをもつ。その目的意識が大事である。そのビジョンと今までの人生体験とを結び付けて考えてみる。

「人生はチェスにとてもよく似ている」ハーバート・A・サイモン『学者人生のモデル』

〜人生における繰り返しの選択とそのときにかける「バイアス」〜

人生は一回一回の決断の集積。一回ことにかけるバイアスが長い間にその人の方向を決める。ラッキーがあってもそれだけでは駄目。自分が何を目指すかを理解しながら、その価値観に従って行動する。

 

 

以上